PLUTO GAMES

韓国のボードゲームデザイナーが設立したボードゲームスタジオです。 テーマを深く研究し、独創的なシステムのボードゲームを創作します。

『プレジデントメーカー』デザイナーズノート④ 有権者の票を得る方法
2026/5/18 16:05
ブログ

韓国の大統領選挙を舞台にした『プレジデントメーカー』の開発過程を連載しています。

前回の記事はこちらからお読みいただけます。

『プレジデントメーカー』デザイナーズノート ① 開発の契機

『プレジデントメーカー』デザイナーズノート ② 4人の候補者

『プレジデントメーカー』デザイナーズノート③ 有権者


 

候補者と有権者が決まったところで、次はその土台の上で何をするかを設定する番です。

実際の選挙運動期間中、候補者たちは票を得るためにさまざまなことをします。 

 

その中で私が最初に思い浮かべたのは、「選挙遊説」でした。

日本でも似たような文化があると思いますが、韓国では候補者が「改造した選挙カー」で全国を回りながら演説をする文化があります。 

これが「選挙」といえば真っ先に思い浮かぶ象徴的な光景だと思ったので、ぜひゲームに入れたいと考えました。 

そして、この部分に「駆け引き」の要素を盛り込むのが適切だと感じました。

▲トラックの上での遊説シーンをイメージした選挙遊説カード

 

前回の記事でこのゲームには5つの地域があると説明しましたが、各候補者はスケジュールが忙しいため、5つの地域のうち2か所にしか遊説に行けません。 

どこに行くかは、地域ごとの選挙への関心度、候補者の支持率、戦略的な重要度などを考慮して決める必要があります。

 

重要なのは、2か所を非公開で決めたあと、同時に公開するという点です。 

そのため、全員が遊説先を同時に明かしたとき、ある地域には一人だけが訪れ、ある地域には複数が同時に訪れることになります。

 

 

単独で遊説に行った地域では、一人で支持率が2マス上昇します。 

その地域の有権者の関心を独り占めにできた、という設定です。

 

一方、複数の候補者が一つの地域で同時に遊説を行った場合、それぞれ支持率が1マスずつしか上昇しません。 

有権者の関心が分散した、ということですね。

 

もしルールがここで終わっていたなら、「運悪く地域が被ったら不利じゃないか」という感想しか出なかったでしょう。 

しかし、同時に遊説を行った場合には、もう一つの効果が加わります。 

その地域での選挙への関心度、すなわち「投票率」が上昇するという点です。

 

「うちの地域に政治家たちが押し寄せてきた。いったい何事だ?」というような感覚で、 

地域の有権者たちが選挙に関心を持つようになる、という設定です。

 

 

もちろん、自分の支持率が高い地域に他の候補者が遊説に来るのは歓迎できることではありません。 

しかし結局、投票率が高くなってこそ、自分の高い支持率がより多くの票に換算されます。 

だから時には、競合する候補者と不本意な共存を余儀なくされる理由にもなります。

 

加えて、ソウル・京畿(キョンギ)はもともと人口が多いという設定のため、常に見逃せない人気地域です。 

そのため、遊説に行けるのが2か所だけというのが、毎回それなりの悩みを生むことになります。

 


 

政治家がみんな悪いわけではないけれど…

 

韓国では(もしかすると世界中どこでも?)「政治家」というと、不正を働くとか、談合をするとか、相手を誹謗するといったネガティブなイメージが強いのが正直なところです。 

それもあって、このゲームでも最も主要なアクションのひとつが「政治工作」です。(笑)

 政治工作を核となる要素にしたのは、政治テーマのゲームである以上、お互いに役を演じながら駆け引きをし、政治的な冗談を言い合うようなインタラクションを期待していたからです。

 

政治工作は基本的に、相手の支持率を下げたり、特定地域の関心度を操作したりと、強力なアクションが多くなっています。 

ただ、それが単純な「テイク・ザット」式の殴り合いに終わるのは避けたいと思っていました。

そこで導入したのが、「リスク」システムです。

 

 

実際の政治でもそうですが、得るものがあれば失うものがあります。 

候補者が強力な効果のカードを使うたびに、「リスクカード」というものを受け取ります。 

これは一種の「政治的リスク」を意味しており、効果が強いほど受け取るリスクカードも増えます。

 

リスクカードの裏面には、1から3の「リスクレベル」が記されています。 

後の「メディア」フェーズになると、各自が持つリスクカードをすべて公開し、「リスクレベルの合計が最も高い候補者」がペナルティを受けます。 

つまり、悪いこと(?)をたくさんしても、一番悪くなければ問題ない、ということです。

問題は、ゲーム中は誰もリスクカードの裏面を見ることができないという点です。 

そのため、他の候補者がリスクカードを何枚持っているかを確認しながら、慎重に政治工作を進める必要があります。 

その点で、常に手番順が最後となる「無所属」候補者は、状況を見ながらリスク管理を柔軟に行えるという利点があります。

 

このシステムを通じて表現したかったことは、大きく二つです。

1)「リスク」と「リターン」のあいだで適度な綱引きをしながら、最大効率のバランスを取っていく感覚。 

2)世論は結局、最も大きな不正を犯した人物にだけ注目し、それ以外はあっさり忘れてしまう。

 


 

首都圏か、地方か

 

大統領は結局、国をよくする人物であるわけで、政治工作のような悪いこと(?)ばかりしているのも少しおかしいですね。 

政策もきちんと発表します。

 

政策は前回の記事で説明した通り4種類あり、一度にひとつを発表します。 

このとき、プレイヤーには常に2つの選択肢があります。

 

-その政策に関心のある「地方の2地域」すべてで支持率を上げる。

-ソウルでのみ支持率を上げる。

 

 

遊説のときも同様でしたが、このゲームの基本構造は「最も重要度の高い(有権者の多い)ソウル」と「残り4地域」での影響力争いです。 

もちろんソウル・京畿に最も多くの票が懸かっているのは事実ですが、残り4地域の票をすべて合わせるとソウルを上回るという点も、見逃してはなりません。

 


 

『プレジデントメーカー』では、「選挙遊説、政治工作、政策発表」を軸に選挙キャンペーンを表現してみました。 

これに先ほど触れた「メディア」を通じたリスク暴露などの要素も加わっています。

 

もちろん、選挙キャンペーンに盛り込める面白い要素はまだあったでしょう。 

「TV討論」のようなものを入れられなかったのは、少し心残りです。(ずっと昔のバージョンでTV討論フェーズを入れたことはあったのですが、さまざまな理由で外れました。)

 

次回の最終回では、ゲームのハイライトである「開票」についてお話しします。 

長い文章をお読みいただき、ありがとうございました。

 

次回へ続く

 

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