PLUTO GAMES @pluto_boardgame
韓国のボードゲームデザイナーが設立したボードゲームスタジオです。 テーマを深く研究し、独創的なシステムのボードゲームを創作します。
- 『プレジデントメーカー』デザイナーズノート③ 有権者
- 2026/5/8 22:10
韓国の大統領選挙を舞台にした『プレジデントメーカー』の開発過程を連載しています。
前回の記事はこちらからお読みいただけます。
『プレジデントメーカー』デザイナーズノート ② 4人の候補者
候補者が決まったところで、次はいよいよ彼らに票を投じる人々、すなわち「有権者」を設定する番です。
韓国は首都ソウルを中心に、大きく五つの「道(ド)」で地域を区分しています。
京畿道(キョンギド)、江原道(カンウォンド)、忠清道(チュンチョンド)、全羅道(チョルラド)、慶尚道(キョンサンド)
これは日本でいう「都道府県」に近い行政的区分ですが、文化的な文脈も考慮すると、関東地方や関西地方のような「地方」の概念に近いとも言えるかもしれません。
五つの「道」のうち、「全羅道(チョルラド)」は進歩的な傾向が、「慶尚道(キョンサンド)」は保守的な傾向が顕著に表れる地域です。
各政党にとってはまさに「地盤」と呼べる場所ですね。
残りの地域は、わずかにどちらかの傾向が優勢だったり、時流によって揺れ動く程度です。

いずれにせよ、この「地域」という区分は、このゲームにおける「有権者の集まり」と言えます。
ここで考えるべきことは、さらにいくつかに分かれます。
- 地域をいくつに分けるか?
- 地域の政治的傾向をどう設定するか?
- 地域間の人口差をどう反映するか?
地域は直感的に5か所に分けるべきだと感じました。
首都ソウルを中心に置き、そこから4つの地域が広がる「放射状」の配置が、ゲーム力学的にバランスが良いという感覚があったからです。
そうなると、ソウルを除く5地域のうちひとつを省く必要があるのですが、「京畿道」をソウルと統合して「首都圏」という概念にするのが最も適切に思えました。
日本でいえば、東京と千葉、埼玉などをまとめた地域、といったところでしょうか。

ここで人口の問題も自然につながってきます。
ソウルをはじめとする首都圏は、韓国で最も人口の多い地域です。
このゲームにおいて人口はすなわち有権者であり、有権者は得点と同義です。
自然と、ソウル・京畿は最も多くの票が懸かった重要地域として設定されました。
残り4地域は、実際には人口の差が少なくないのですが、この現実の格差をゲームに反映すべきかどうか悩みました。
いわば「ゲーム性」と「現実性」の問題ですが、真面目な政治シミュレーションを作るわけではないので、ゲーム性を選ぶことにしました。
その結果、『プレジデントメーカー』では4地域すべてに同数の有権者が設定されています。
次は地域ごとの「政治的傾向」です。
おそらく、最も頭を悩ませた部分です。
まず、5つの地域それぞれに一種の政治的傾向を与え、それをもとに初期の政治地図が作られると良いと考えました。
ただし、ソウルは人口が最も多い重要地域であるため、特定の政治的傾向を与えないほうが良いと判断しました。
残り4地域についてですが、前回の記事でも触れたように、韓国の政治的傾向は保守か進歩かに大きく二分されています。
違いはその色合いが濃いか薄いかです。
これを踏まえ、以下の4種類の政治的傾向を導き出しました。
進歩/中道進歩/保守/中道保守
問題は、それぞれの傾向をどの地域に割り当てるかでした。
韓国では政治的傾向の問題は思いのほかデリケートであるため、これを不用意に刺激することは、場合によってはプルートゲームズの存亡(?)にも関わりかねません。(笑)
そのため、たとえそれが事実であっても、特定の地域に特定の政治的傾向を断定的に割り当てることは少々危険だと判断しました。
結局ここでも現実性よりゲーム性を優先し、4枚の政治傾向カードをシャッフルして各地域にランダムに配置する方式を採用しました。
まさにこの時点で、ゲームの説明文にどうしても次の一文を入れなければならないと思ったのです。
「このゲームの舞台は、パラレルワールドの韓国です。」
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▲ 各地域ボードにランダムに配置される政治傾向カード
各地域の政治的傾向に応じて、候補者の初期支持率も異なります。
「保守」傾向の地域では当然、保守系候補者の開始支持率が高く、進歩系候補者の支持率は低くなります。
「中道」傾向の地域では、依然として保守あるいは進歩系候補者の支持率が最も高いものの、中道候補者の支持率もそれなりの存在感を持つ形になっています。

▲「中道保守」傾向に設定された「忠清道(チュンチョンド)」の初期支持率の状況。保守(紫)が最も高く、進歩(オレンジ)が最も低くなっています。
最後に、有権者の関心が「政治的傾向」だけに限られるのでは少し物足りないと感じました。
選挙において政治的傾向と同じくらい重要なものといえば、「政策」、すなわち実際の社会的関心事でしょう。
先ほど述べたように、当初からソウルを中心に4地域が放射状に配置される形式を考えていたため、政策の種類も4つが最も適切でした。
何を4つにするかという細かい部分は、政治的傾向ほど重要ではありませんでした。
適当に経済、外交、国防、環境の4種類に設定しました。
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より重要なのは、これらの政策が各地域にどのような影響を与えるかでした。
政治的傾向のように各地域と1対1で対応させるのはあまりにも単純すぎると感じました。
ゲームのダイナミクスと変数を生み出すためには、少しひねりが必要だと考えた結果、地域と地域のあいだに政策カードを配置する形式を思いつきました。
つまり、すべての政策カードは隣接するふたつの地域に関わり、その政策がふたつの地域の「関心政策」となる仕組みです。(ソウルは中央に位置するため、すべての政策カードと隣接します。首都である以上、あらゆる政策に関心があるという設定です。)
これにより、政治的傾向が正反対のふたつの地域であっても、政策に関しては同じ関心事を共有するという、少々アイロニカルな状況が生まれることになりました。
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▲忠清(チュンチョン)と江原(カンウォン)は、国防という関心事を共有しています。
無所属候補者はすべての地域で支持率が低い傾向にありますが、それを補えるのがまさにこの政策です。
無所属候補者は、ランダムに設定されるひとつの政策分野の「専門家」という設定です。
政治色に左右されることなく、ある分野で頂点を極めたのちに政界へ飛び込んだ人物とでも言いましょうか。
無所属候補者は、自分が専門とする政策が「関心政策」である地域で追加の支持率を得た状態でゲームを開始します。
さらに、ゲーム中に専門分野の政策をプレイするたびにボーナスも得られますが、この部分については後の記事で説明します。

▲「外交」政策を専門分野とする無所属候補者の例
候補者たちが活躍する舞台と、そこで票を投じる有権者についての設定はひとまず整いました。
次回は、候補者たちが有権者の心を掴むために「何をするのか」について書いていこうと思います。
次回へ続く
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新作『プレジデント・メーカー』のゲーム紹介を公開しました。韓国の大統領選挙を題材にしたボードゲームは非常に珍しいと思います。ゲームの詳細が気になる方は、ぜひブログをご覧ください!https://t.co/o60UB2UbOg
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