A.F.N. GAMES AFNGAMES
アナログゲーム制作サークル「A.F.N. GAMES」です。
「好きな世界観を作品に」をモットーに活動をしている2人組の小規模サークルです。
- 『モンスターブリーダー』 デザイナーズノート
- 2025/5/14 9:54
こんにちは、A.F.N. GAMESです。
はじめてゲームを作った程度で、いきなりデザイナーズノートを書いて何か有益なことが発信できるのか?と自問自答しつつも筆を執ってみました。
というのも、僕らが作った「モンスターブリーダー」というゲームがどんな発想や考え方から作られたものなのか、そもそもこのゲームはどんなゲームなのかをなるべく多くの方に知っていただきたいという理由がありまして。
あとは自分たちの備忘録的な意味も込めて残しておこうと決意しました。
昔からこういうものは書こうと思ったときに書かないと、一生書くことがなくなってしまう性格なので、今回自分の尻を叩きながら執筆しました。
多少読みにくい箇所もあると思いますが、寛大な気持ちでご覧いただけると幸いです。
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1. ゲーム制作のきっかけ
人がゲームに「愛着」や「手応え」を感じる瞬間は、決して勝敗だけではありません。
たとえば——
- 自分の選択が明確に結果へとつながったとき
- 自分の判断が他者と違う結果を生んだとき
- 成長や積み重ねの“跡”が自分の中に残ったとき
そういった“自分だけの体験”が、プレイヤーの記憶にゲームを強く刻みます。
一方で、現代のカードゲームにおいては「構築環境の最適解」や「流行デッキ」が主軸となりやすく、個々の選択や立ち回り方、考え方や思考が狭まってしまっている傾向にあります。そこに僕たちは、少しだけ違和感を覚えていました。
「流行のデッキばかりがひしめく環境は本当に楽しいのか?」
「最適解の構築を模倣するだけで満足できるのか?」
——そんな問いが、本作『モンスターブリーダー』の出発点です。
きっかけはTCGの環境スピードへのしんどさ
制作のきっかけは、具体的な体験から生まれました。
よく遊んでいたカードゲームでは環境が目まぐるしく激変し続けており、何度もお気に入りのデッキが機能しなくなることを経験。更に言えば今まで使用できていたカードがスタン落ち(レギュレーションの変更により、以前は使用可能だったカードが使用できなくなる状態)により、使用不可能になることも。そのたびに新しくカードを買い直し、構築をやり直す。
もちろん、それもカードゲームの醍醐味の一部ではあります。しかし、繰り返される環境変化と買い替えのサイクルに、次第に“疲れ”や“しんどさ”を感じるようになりました。
そんなカードゲーム界隈の状況から、”飽きずに長く遊べるゲームを作ろうと決断”し、自分たちでゲームを作ることに踏み切ったわけです。
ただ、せっかく作るのであれば市販TCGとは違う体験を届けたい。
構築するたびにプレイフィールが変化し、何度遊んでも飽きない仕掛けを取り入れたい。
プレイヤーの選択が毎回結果に直結し、その積み重ねが勝敗に繋がるような体験を作りたい。
そんな思いが自然と膨らみ、やがて一つの明確なコンセプトへと結実しました。
目指したのは、“何度でも遊べる、自分だけのモンスターを育てて戦うゲーム”。
モンスターとともに歩み、プレイヤーの選択が積み重なって強さになる。
そんな愛着と戦略が同居したカードゲームを作ること。
これが、僕たちの初めてのアナログゲーム制作への挑戦の始まりでした。
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2. ゲームコンセプトの設計
モンスターブリーダーでは、いわゆる“召喚”という概念や、複数体のモンスターを展開するようなシステムは採用していません。プレイヤーは、たった1匹のモンスターと向き合い、育てていきます。この1体を通して“選択”と“成長”のすべてを背負う構造を目指しました。
多くのカードゲームでは、召喚や複数展開が基本です。
なぜなら、そうすることでキャラクターを大量に投入でき、拡張性や販売展開の幅が広がるからです。新しいカード=新しいキャラクター=新しい売上、というビジネス構造がそこにあります。
でも、僕たちの作品は違います。
ビジネスとして大量展開を目指すものではなく、限られたカードプールの中でも繰り返し遊べる“BCG的な存在”を目指しました。だからこそ、無理に種類を増やさずとも、1体のモンスターにすべての選択を託す構造に意味が生まれます。
また、僕自身、子供の頃から“効果だけ使って捨てられていくモンスターたち”に、どこか寂しさを感じていました。
「このモンスター、すごくかっこいいのに すぐ墓地に送られて終わりか」と。
そんな思いから、1体のモンスターに愛情を込めるゲームを作りたい。効果の使い捨てではなく、そのモンスターだから好きになるゲームを作りたい。
そう思ったのです。
この思想は、モンスターのステータス設計にも直結しています。
モンブリでは、モンスターにあらかじめ定められた攻撃力や防御力は存在しません。プレイヤーがゲームプレイ中にモンスターを育成し、能力を高めていくシステムを採用しました。
市販のカードゲームでは、ステータスをあらかじめ数値化して提示するのが常識です。なぜなら、数値で提示しておかないとカードの強さが直感的に分かりづらく、商品の魅力を伝えにくいからです。
しかし、僕らは「強さはあらかじめ決められるものではなく、自分自身で築き上げていくこともできるのではないか」と考えました。その結果、プレイヤーが攻撃・防御・EX(経験値)といったステータスを、ゲーム内でアイテムを使用することによって自由に伸ばしていく育成型システムが誕生しました。
たとえば、「筋力トレーニング(攻撃+1)」や「プロテイン(防御+1)」などのアイテムを資金と相談しながら購入するかどうか、それらのアイテムを今使うべきか敢えて温存するのか。
——その判断一つひとつがモンスターの成長や戦略に繋がっていくような設計となりました。
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3. こだわりと製作の裏側
当然ながら、最初から理想の形にたどり着けたわけではありません。
開発初期のモンスターブリーダーは、現在とはまったく違う仕様でした。たとえば、全プレイヤーでフェーズを共有する煩雑なルール、進化のために複雑な条件を満たさなければならない設計、構築における過剰な制約など……。
↑モンブリ初期のカードたち(ルールそのものが違ったときのもの)
テストプレイを重ねる中で、「やりたいことは伝わるけど、正直遊びづらい」という声が何度も上がりました。その原因は単純明快。
「進化条件を用意して、進化ルートを分岐させたいよね」
「攻撃、防御のほかにも体重とかスピードの概念もほしいな」
「属性による相性なんかも取り入れたい」
「満腹度、食事のフェーズも追加しよう」
上記は一例にすぎませんが、このように自分たちがやりたいことをすべてゲームの要素として詰め込みすぎた結果でした。自分たちが作っているのは”TVゲーム”ではなく”アナログゲーム”という認識が欠落していたのです。
発期間は2年、うち1年で今の形に。
そこで、僕たちは1年以上かけて、週1回以上のペースでテストプレイとシステム改善を繰り返し続けてきました。
- フェーズ進行の大幅な簡略化
- 進化条件の統一とシンプル化
- システムの構造見直しと再構築
- カード効果のバランス調整 etc...
そして、大きな転機となったのが「ランダムピック方式」の導入。
事前に好きなようにデッキを組むのではなく、ランダムに配られたカードから即興で育成方針・戦略を組み立てる。これにより、毎回違った展開と戦術が生まれるようになりました。
TCG特有の遊ぶたびに決められたムーヴをおこなうゲームではなく、遊ぶたびに戦略が変化するゲームにすることで、繰り返しプレイすることによる飽きを防ぎたかったのです。
他のTCG風ゲームでもよくある「コンボ」や「シナジー」といった気持ちよさはそのままに、良い意味で再現性の少ないゲームへと仕上げることできました。
継続的なデッキビルドを可能にする「ショップシステム」も重要な柱となりました。
ゲーム中に資金を使い、ステータスを伸ばしたり、補助効果を得たりするカードを購入できる仕組みです。どのタイミングでどんなカードを購入するかによって、その後の展開や戦略が大きく変化する要素。
常に流動的にショップのラインナップは変化するため、予期せぬリーサルが生まれたり、逆転を狙えるカードを手に入れたりと、ゲームの展開に彩りを加えてくれるようになりました。また、このショップシステムにより、ランダムピックでのデッキ構築がうまくいかなかった場合でも、ゲーム中デッキビルドをおこない立て直すことも可能となったのです。
サークル内では冗談混じりに「このシステムは特許取るべき」なんて言っているくらいには、このゲームの核となってくれた仕組みです。
こうした仕組みの数々を取り入れ、逆に盛りすぎた要素を削りながら、モンスターブリーダーは、「遊びやすさ」と「プレイヤーごとの個性」を両立したゲームへと成長していきました。
クオリティへのこだわり
実際にモンスターブリーダーを形にするにあたっては、限られたリソースの中で最大限のクオリティを目指しました。イラストのデザインにしろ、カードの品質にしろ、コンポーネントや説明書に至るまで、今自分たちでできる最大限のものに仕上がっていると思っています。
ただ、幸いにもチーム内に印刷関係の仕事に携わるメンバーがいたため、一部コンポーネントの印刷・加工は職場設備を活用してコストを抑えることができましたし、浮いたコストはカードの品質などに回し、「手に取ったときの満足感」を妥協せずに追求しました。
パッケージ1つあたりの原価や利益などは、また別の機会にお話できればと思いますが、ただ利益率だけを重視するのではなく、「価格以上の体験価値」を提供することを意識した値段設定にしているつもりです。
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4. プレイ体験と評価
クローズドな試遊会をおこない実際にプレイヤーに触れてもらったところ、非常にポジティブな反応をいただきました。普段からカードゲームの大会シーンなどに参加している方や、カードゲーム自体あまり遊ばないという方まで、様々な境遇の方々に遊んでいただいた結果
- 「カードゲーム初心者でもすぐにルールが理解できた」
- 「育成方針を考えるのが楽しい」
- 「構築環境に縛られないから、毎回違う戦い方ができる」
このような意見をいただくことができました。
現役のカードゲーマーからは「育成とバトルが噛み合った良作」「一体感を感じられるシステム設計」と高く評価していただき、開発者として大きな自信に繋がり感謝しています。
「市販TCGでは体験できない、“自分だけの育成戦略”が楽しめる」
そんな感想をもらえたことが、何よりもうれしい成果でした。
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5. おわりに
モンスターブリーダーは、一度きりの構築やテンプレート戦術をなぞるゲームではありません。
育成と選択の積み重ねによって、毎回まったく違う戦いが生まれる——いわば、“スルメゲー”と呼ぶにふさわしい奥深さを持っています。
実際に試遊会の席では、みなさん時間を忘れて5時間ぶっ通しでプレイされていたくらいです。プレイすればするほど味がするなんて評価も。
たった1匹のモンスターと向き合い、育て、戦う。
その過程で生まれる駆け引きや戦略がこのゲームの楽しさに繋がっていると思っています。
もし手に取っていただく、遊んでいただく機会があれば、ぜひその感想をお聞かせください。今後の活動の励みにさせていただきたいです。
(このゲームを面白いと感じてくれる方が多く生まれたら、バランスを損なわない程度で新規拡張パッケージの開発やオフライン対戦会なんかも開いてみたいな。なんて思っていたりします。)
こだわりと愛情を込めて作ったこのゲームです。ぜひあなた自身の手でこのゲーム体験を味わってみてください!