三枚研究所 @sanmai_lab
3枚だからこそ深い。少ないルールで長く遊べるアブストラクトゲームを研究・制作しています。
- 駒はたった3枚。それでも局面は約90億。 ―『鶴亀返し』開発裏話
- 2026/9/25 21:06
『鶴亀返し』を初めて見た方からすると、
「駒が3枚ずつしかないなら、すぐに展開を覚えてしまうのでは?」
と思われるかもしれません。
実は、私自身も開発の初期にはそこを一番気にしていました。
ルールはとてもシンプルです。
自分のコインを動かす。
動かしたら裏返す。
同じ面の3枚を一直線に並べたら勝ち。
覚えるだけなら、ほぼ1分です。
だからこそ、
「ルールが簡単なのはいい。でも、本当に何度も遊べるゲームになっているのか?」
という疑問がありました。
そこで開発中、実際にコンピューターで局面を調べ始めました。
すると、思っていた以上に大きなゲームでした。
現在のルールで、実際に到達可能な局面を探索した結果、確認できた局面数は
約90億局面。
正確には、およそ 90.1億局面 です。
コインは全部で6枚しかありません。
それでも、
「どの交点にいるか」
「表か裏か」
「どちらから来たか」
「次にどこへ動けるか」
という情報が組み合わさることで、盤面は一気に複雑になります。
特に『鶴亀返し』では、コインを動かすたびに必ず裏返ります。
同じ場所へ移動しても、表と裏では意味が違います。
さらに、直前にいた場所へは戻れません。
つまり、
「どこにいるか」だけではなく、「どうやってそこへ来たか」も局面の一部
になります。
これが、見た目以上に大きなゲーム空間を生んでいます。
開発中に面白かったのは、コンピューターで大量の局面を調べても、
「この形ならこうすればいい」
と単純には整理できなかったことです。
盤の中央を取ると強そうに見える。
一直線を狙えばよさそうに見える。
相手の三連を防げば安心に見える。
ところが、実際にはその一手先で別の勝ち筋が生まれます。
最近公開している「詰鶴亀」でも、
一つの三連を防いだ瞬間に、
別の三連へ狙いを切り替える問題が出てきました。
盤面にあるのは、たった6枚のコインです。
でも、その6枚が
表になったり、裏になったり、向きを変えたりするだけで、読みの景色が大きく変わります。
もちろん、
「90億局面あるから面白い」
というわけではありません。
数字が大きいだけでは、ゲームの面白さにはなりません。
大切なのは、
ルールは簡単なのに、毎回「ちょっと考えたくなる局面」が生まれること。
『鶴亀返し』では、そこを目指して何度もルールを調整してきました。
複雑なルールを追加して奥深くするのではなく、
できるだけ少ないルールの中から、自然に読み合いが生まれるようにする。
その結果が、
「ルールは1分、ずっと遊べる」
という現在の形です。
ゲームマーケットで盤面を見かけたら、
ぜひ最初は難しく考えずに、1局遊んでみてください。
最初の数局は、
「ここに動けば三連!」
くらいでも十分です。
でも何局か遊んでいると、
「ここへ動くと裏になるから……」
「これを防ぐと、次はこっちが危ない……」
「中央を取ったけど、本当に動いていいのか……」
と、少しずつ盤面の見え方が変わってきます。
3枚しかないのに、まだ知らない形が出てくる。
その感覚を楽しんでもらえたら、とても嬉しいです。
『鶴亀返し』
ルールは1分、ずっと遊べる。
