あらたま農園企画開発部 @aratama_create
おいしいぶどうと楽しいゲームを作る会社です。 本業はぶどう農家ですが、代表社員二人でアナログゲームを制作しています。
- 【2026秋新作】2人用アブストラクトゲーム「Icarian Digits」のご紹介
- 2026/9/5 21:02
こんにちは。あらたま農園企画開発部です。
ゲムマ2026秋に初参加。10/18(日)の単日出展を予定しております。
この記事では、今回頒布する3つのゲームのうち、ダイスで行う対局ゲーム「Icarian Digits」について詳しく紹介していきたいと思います。
ルールについて

全てのルールをここに書くわけではなく、根幹の部分を紹介して、「あとはお買い求めの上お楽しみください」というスタイルで書いていこうと思います。
Icarian Digitsは、ダイスをコマにしてチェスのような対局ゲームを行うといったスタイルのゲームになっています。
大きな特徴としては、コマの初期配置が存在しないことと、盤面が3×3しかないこと。
その3×3の盤面のうち最も自分側の一列を「自陣」と呼びます。ゲームは、交互に手番を消費して「自陣」の好きな位置にコマを投入するところから始まります。
一度盤面に投入されたコマは同様に手番を使って移動させることが可能です。最初に自陣に置く時にはダイスの目は1ですが、移動するたびに1つずつ目が大きくなっていきます。(一部例外アリ。)
このゲームの勝利条件は、相手よりも先に自分のコマを3つ「あがり」にすること。
あるコマを「あがり」にするためには、目を6まで進めた上でさらに一手番使って宣言を行う必要があります。
なので基本的にはたくさん移動させてどんどん目を進めていくのが大切なのですが、そこで問題になるのがお互いのコマの「とる/とられる」のルール。
このゲームでは、より小さい目のコマが、より大きい目の相手のコマを一方的にとることができます。
なので、コマをあがらせるために目を進めるほど、相手から狙われやすくなってしまうというわけです。勝利を目指すためには、うまく逃げ回ったり、より小さい目のコマで相手を牽制したりしながら手を進めていく必要があります。
とはいっても3×3の狭い盤面、お互いに3つまでコマを出せるので最大6個。逃げ回り続けるのにも限界があります。別の方向から数手かけてじっくり追い込まれてしまうと、あがるよりも先に簡単に詰まされてしまうのでは……?とお思いの方も多いのではないでしょうか。
そうした状況への対策のため、このゲームでは、自分から見て盤上の一番手前側の一列を「自陣」と定義し、自陣にあるコマを使って行える特殊な手を2種類用意しました。それが「撤退」「入替」です。
撤退は、自陣にあるコマを手持ちに戻す行動です。それだけでは単に勝利から遠ざかるだけの選択にしかなりませんが、撤退を選んだ手番、自分は2回分の移動権を得ます。
いわば、そのコマを出すために使った分の一手が帰ってくるような仕組みです。出してから進めた分の手番は戻りませんが、時には2や3の目のコマを戻して他のコマを2手動かすのが最善になることもあります。
一方、入替は自分の陣地に2つ以上のコマがある時にのみ使える手です。それらの中から2つを選び、それらの位置を入れ替えます。
自分の大きな目のコマが相手に取られそうなときに特に有効な手で、守りたいコマを安全な場所に逃がしたり、逆にいきなり相手のコマを取れる状態にしたりすることも可能です。いわゆる「攻防手」として機能しやすい行動なので、常に選択肢として頭に入れておく必要があるでしょう。
投入、移動(攻撃も含む)、撤退、入替。これら4種の行動から最も有効な手を選び、進行度で相手に差をつけて勝ち切る。Icarian Digitsはそういうゲームです。
プレイの勘所
上にも書いているように、このIcarian Digitsはチェスのようにコマを少しずつ進めていくゲームなのですが、勝利条件にコマの取り合いが直接関係しないという特徴があるため、安定して勝つためにはチェスや将棋とは少し異なった視点が必要になります。
それは、「目の進行効率」という概念です。
このゲームで勝つためには、相手よりも早く3つのコマを6(+1)まで進める必要があります。そして、1手番につき盤面全体で1つしか目を進めることができません。(撤退後には2つ目を進める権利を得ますが、撤退したコマは再度投入するために1手使うことになるのでプラスマイナスゼロです。)
また、中には1手使って目を1つも進めない「+0」の手も存在します。自陣方向への後退(移動)、相手への攻撃、入替がそれにあたります。
極端な話、自分が+0の手を1度打ち、相手が+1の手のみを打ち続けてお互いに干渉しなければ必ず負けてしまいます。
つまり、これらの手を打つ場合には「この手によって相手は1手以上損をするのか?」ということに気を配る必要があるということです。
例えば、相手の2のコマを自分の1でとれば相手は分かりやすく2手損します。それを避けるために相手が1マス後退すれば1手損、そのあとの展開次第で+αが発生するでしょう。
また、相手の進行に邪魔になる場所にコマを置くことで損をさせることもできます。分かりやすいところでは、盤のど真ん中のマスに自分の1のコマを置ければ、相手はかなり動きづらくなるでしょう。
つまり、自分と相手の手番の損得を常に意識するのが重要になるということです。入れ替え+攻撃で相手のコマを取ったからといって、必ずしも自分が有利になっているとは限らないわけですね。そのあとの盤面が相手にとって嫌な形になるかをしっかりと考えながら最善手を検討しましょう。
余談
制作経緯
このIcarian Digits、ゲームマーケットでの頒布は2026秋が初めてなのですが、実は一度だけそれよりも前にある場所で販売を行っていました。
その場所とは、2026年8月4日から10日にかけて広島県の神石高原町で開催された、第19回日本スカウトジャンボリー。
全国からボーイスカウトの子供たちが集まり、キャンプなどを行いながら一週間を過ごすこのイベントで先行販売(?)の機会に恵まれました。
我々あらたま農園は神石高原町で主にぶどうを栽培している農園なんですが、農閑期などにお手伝いしているNPO法人がこの「ジャンボリー」に物販ブースを出展することになり。
主に町にちなんだおみやげなんかを販売する予定だったところ、「中高生ぐらいがそんなに(なんとボーイスカウト年代が6500人参加)集まるのなら、その場で遊べるものを売るといいのでは?」と提案してみたら「面白そうだから、やってみてくれ」とGoが出ました。
そんなわけで、前職でほんの少しだけボードゲーム制作に関わった経験のある私がその販売用のボードゲームを考案するという流れになったというわけです。
そうした経緯から、ルール策定の段階から、以下の3つの要件を意識する必要がありました。
- 値段を安く抑えるため、コンポーネントが少ないこと
- 子供たちがカバンに入れて持ち帰るために、箱のサイズが小さいこと
- あまりデザインがポップすぎず、「昔からあったゲーム」のように見えること
……3つ目に関しては「家に持ち帰ってから親御さんに嫌な顔をされないように」と勝手に設定したものですが、メインターゲットが中高生で販売場所がキャンプ場である以上、どれも外せない条件だと考えていました。
その結果、「ダイスのみを使う対局型アブストラクト」「盤面サイズは3×3」「盤面にコマを並べるところから手番を使う」という基本設計が自ずと定まっていき、こうしたルールのゲームが生まれることになったのです。
ちなみにジャンボリー期間中には40個ほど販売できました。前日に買っていき、翌日にわざわざ「面白かったです!」と声をかけに来てくれる子もいて、製作者としての至上の喜びを感じることができました。

モチーフ
このゲームのタイトルは「Icarian Digits」。直訳すると「イカロスの数字」ですが、このタイトル自体は、ルールがすべて確定した後に「なにかいい言葉がないかなあ」と検討してひねり出したものです。
「Digits」の部分はもちろんサイコロの目を表しています。では一体何がイカロスなのかというと、「6の目からさらに一つ進むとコマがあがる」「コマの目が大きくなるほど相手から攻撃されやすくなる」という要素を、「天を目指してロウの翼で飛び立つ」「高度を上げすぎ、ロウが融けて墜落する」というイカロスの神話に読み替えた、という名付けになっています。
フレーバー的なモチーフとしてはそれ以上のものはないのですが、実は、このゲームにはルール側に別のモチーフが存在します。
そのモチーフとは、中世のヨーロッパで盛んにプレイされていたとされる、「Darebase」「Prisoner's Base」あるいは単に「Base」「Barres」などと呼ばれていた、「団体戦型鬼ごっこ」とでも言うようなルールの遊びです。
この遊びは最小5人ずつくらいのチームに分かれてお互いに相手チームのメンバーを捕まえようとするのですが、捕まえる/捕まえられるの部分に重要な取り決めがあって、それは「より後で自分の陣地を出たほうのメンバーが先に陣地を出た相手を捕まえられる」ということ。
お互いのチームがそれぞれ向かい合うような形で陣地を持っているので、相手から追われることになったプレイヤーは必死に自分の陣地を目指して走ります。うまく逃げおおせて自陣に帰ることができれば、今度はこちらが相手を追いかける番です。自分の追手よりも今陣地を出たばかりの自分のほうが後に出ているため、追うものと追われるものが入れ替わるというわけです。もちろん、追ううちに相手が帰陣に成功すれば、みたび立場が逆転します。
こうした攻防が同時多発的に起こる鬼ごっこのような遊びがこの「Darebase」だそうです。
ここまで見ればわかる通り、Icarian Digitsはこの遊びから「陣地を出てからの時間が長くなるほど立場が弱くなる」という部分を借用しています。撤退によって2回の移動権を得られるという仕様も、陣地に帰る(手持ちに戻す)という選択を意味あるものにしようとして考えたものです。
このDarebase、シンプルな構造ながら、なかなか面白いジレンマとドラマチックな展開を実装している素晴らしいゲームだとは思いませんか。私はそう思ったので、今回一部ルールを翻案しつつお借りすることにしました。
……と、ここまで書いたところではじめて知ったのですが、Darebaseは現代では往時ほど盛んには遊ばれていないものの、アメリカではサマーキャンプなどで定番の遊びとして親しまれているそうです。
そして、このゲームを先行販売したスカウトジャンボリーは、まさにサマーキャンプそのもの。
どうやら私は、知らず知らずのうちにぴったりのモチーフを選んでいたようです。すごい偶然。
以上、2人用アブストラクトゲーム「Icarian Digits」は1200円で頒布予定!2日目(10月18日)はあらたま農園企画開発部のブースへお越しください!
【2026秋新作紹介】
— あらたま農園企画開発部 (@aratama_create) September 3, 2026
Icarian Digits(2人用/30-40分/1200円)
3×3の盤面上で行う2人用アブストラクトです。
ダイスをコマとして使用し、1の目で盤面に投入したコマを移動させながら6まで目を進め、「あがり」にすることを目指します。
先に3つのコマをあがらせた方が勝利。
10/18(日)に頒布します!! pic.twitter.com/oVYPdXUixB
