ちゅーボド @chu_bodo
名古屋の社内ボードゲーム同好会活動から生まれたゲーム制作サークルが、ゲムマに初出展! 初のオリジナルボードゲーム『新聞王 :THE SCOOP WARS』(名古屋ボードゲーム楽市「フレッシュドラゴン大賞2026」推薦賞受賞)と『名前のないレストラン』を頒布します。両タイトルとも、ゲムマ公式サイトとGoogleフォームで予約受付中。【土曜-H14】でお待ちしています。
- #4「テーマとアートワーク」 新聞記者が本気で考えた新聞記者のボードゲームができるまで 『新聞王:THE SCOOP WARS』デザイナーズノート
- 2026/5/18 16:02
『新聞王:THE SCOOP WARS』(以下『新聞王』)のデザイナーズノート第4回です。
『新聞王』の核となっている以下の4点について紹介するのは、これで最後になります。
ということで、いつものラインナップ。
- 軽すぎず重すぎず、単純すぎず複雑すぎない、ちょうどいいプレイ感
- 他プレイヤーを直接攻撃はしないがソリティア感もない、適度なインタラクション
- メインのメカニクスは、バッティングとエリアマジョリティ(サブは、ドラフトとセットコレクション)
- テーマは新聞記者や新聞業界、取材競争
このうち今回は「4」の「テーマ」と合わせて、『新聞王』独特のアートワークやコンポーネントについても触れたいと思います。
新聞のゲーム、もっとあってよくないですか?
まずはテーマについて。「新聞」に関連するあれこれは、ゲーム化しやすそうな部分が多々あるように以前から見えていました。
『新聞王』のテーマである取材競争以外でも、たとえば紙面は「ウボンゴ」のように隙間なくレイアウトされていてパズルのようだし、朝夕刊の締め切りが毎日定期的にあるのは制限時間内に何かを完成させる協力ゲームを連想させる…といった具合です。
つまり、新聞はボードゲームの題材として、とてもポピュラーなんじゃないかと思っていました。
しかし、現実はそうではないようです。私の知る限りですが、新聞をメインの題材にした、私が好む運と戦略のバランスがほどよい対戦ゲームはあまり見当たりません。特に国産ゲームでは。(ちなみにBGGには「Newspaper games」というリストがあります https://boardgamegeek.com/geeklist/166456/newspaper-games)
なんで? というのが率直な気持ちです。
私自身が新聞社で四半世紀働いてきた「中の人」ということもあり、この現状にはちょっと悲しみと不満を感じてきました。
そこで発揮したのが、ボードゲーム制作者の多くに共通する「ないものは自分で作る」の精神。付け加えるなら「新聞離れ」を何とかしたいというのも、動機の1つです。
若者はまだしも子どもに聞くと、新聞を読んだことはおろか見たこともないという答えも珍しくありません(このことも、新聞テーマのゲームがあまりない理由の1つかもしれません)。
「ゲームを通してなら、子どもにも少しは新聞に興味を持ってもらえるのではないか」という下心を、隠すつもりはありません。
ただ、それだけでもありません。ドラマなどで見る何となくそれっぽい新聞記者像ではなく、自分ならより現実に即したものが作れるのではないかという思いもありました。
テーマ先行だからできること・できたこと
以上のことから、ゲームデザインの面では『新聞王』は完全に「テーマ先行」でした。
バッティングゲームを作りたくて『新聞王』を作ったわけではない。テーマを最も適切に表現できるメカニクスが、バッティングであり、エリアマジョリティだったということです。
バッティングは取材範囲を同じくする同業他社の記者のネタかぶりであり、エリアマジョリティは取材場所を巡る主導権争いである。後から足したセットコレクションやドラフトも、各紙の特色を表現できることもあって採用しました。
とはいえゲームはゲームなので、完全にリアルというわけではありません。ただ、新聞社についてよく知る人ほど、ゲーム中にニヤリとできる部分もあるかもしれません。
その例でいうと、記者カードのうち「写真部」と「デジ編」はゲーム中で唯一共通する「2」という数字を持ち、他に比べてバッティングしやすくなっています。
写真部とデジ編記者はともに、商売道具であるカメラを手にしています
これは前者が「写真」、後者が「動画」というビジュアルコンテンツを主に担当するために、取材現場もかぶりがちという現実を反映してみました(ちなみに会社によっては1つの部署で両方担当している場合もあるようです)。
また、新聞記事の見出し付けやレイアウトを担当する「整理部」の記者カードのフレーバーテキストには「4倍ゴロゴロ見出しで畳みます」という謎のワードを添えましたが、どういう意味か正確に分かる人はかなりの新聞マニアではないでしょうか。
これは私自身に整理部勤務の経験があるから考えられた、なかなか味のあるセリフだと思っています。
整理部記者が手に持っているのは「さし」などと呼ばれる新聞社独特の目盛りが刻まれたレイアウト用の定規です
そして、最強の「エース」は、どの部署の記者かをあえて示していません。そうしたのには、プレイヤーそれぞれが思う最強の記者像を当てはめてもらえばという狙いがあります。
補足すると、各記者が持つ1〜10の数字は、実在する部署の優劣を示すわけではなく、あくまでゲーム上のものです。
実際の新聞社もゲームの『新聞王』も、それぞれの記者が適材適所で活躍することで最大の力を発揮できる、ということは声を大にして言っておきたいです。関係者から「○○部がこの数字なのは納得いかない」といった意見があったので(笑)
場所に込めた思い
記者以外の要素にも、自分ならではの工夫を盛り込みました。
たとえば、ゲームに登場する4種類の場所、「国会」「スタジアム」「新聞社」「出張」について。このうち「新聞社」を入れたのが、最も自分の作品らしい点ではないかと思います。
ふつうのゲームなら「事件現場」などが登場すると思いますが、あえて採用しなかったのは、ゲームの中とはいえ事件や事故を軽々しくは扱うのはやめようという自分なりの思いがありました。
そのかわりに入れたのが「新聞社」。ふだん縁のない人にも興味や親しみを持ってもらえたらと、会社の中のできごとをゲーム内で表現してみました。
新聞社と新聞社で得られる「小ネタ」の一例。ありそうでなさそうでありそう?なネタをちりばめてみました
また、各記者は配置ボーナスを得られる「得意場所」を1~2つ持っています。運動部は「スタジアム」、整理部は内勤記者なので「新聞社」で働くのが得意、といった具合です。
この要素も、新聞記者の実情を上手くデフォルメしてゲームに落とし込めたのではないかと思っています。
予想外のイラストでつくられた世界観
『新聞王』のイラストをはじめとしたアートワーク全般は、夏目ミホ先生にお願いしました。(同時リリース作の『名前のないレストラン』も同様です)
先生と言っても同じサークルの仲間なので、とても気安い関係です。サークル内にデザイナーがいることが、我が「ちゅーボド」最大の強みと言えるかもしれません。
ちなみに記者のキャラクターを描くにあたっての参考のイメージとしてはアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」のキャラクターや、「富士-脱出-」「ブラッディイン」などのアーティスト Weberson Santiago の作品を提示しましたが、できてきたのはこれまで紹介してきたとおりのイラスト。いい意味で裏切られました。
「PSYCHO-PASS サイコパス」などを例に挙げたものの、あまりにハードボイルドやアニメチックに偏ってしまうと、取っつきにくくなるかもしれないと危惧していましたが、全くの杞憂に。既存のどのゲームにも似ていない、キャッチーかつ独特な世界観が出ているのではないでしょうか。
ゲームの内容はともかく、このアートワークが気に入った・気になった方にもぜひ、『新聞王』を手に取って見ていただければと思います!
カードだけで「ボードゲームらしさ」を出す
私自身はカードゲームも好きですが、ボードを使った盤面のあるゲームがより好みです。
『新聞王』のコンポーネントはカードのみですが、記者カードの累積で「盤面」がつくられていくので、プレイ感はボードゲームに近いものにできたと思っています。
制作の中期までは、カード以外にも得点の記録用にボードやチップも使っていたのですが、(#1で理想に挙げた「サンファン」のように)すべてカードで完結するのがスマートでいいと思い、その方向にかじを切ったことでゲーム内容の整理にもつながりました。
とはいえ「ボードありのゲームを作りたい」という気持ちもやはり強いので、今後の楽しみに取っておきます。
また、ゲーム本体に引けを取らず重要なコンポーネントである「説明書」の分かりやすさにも心を砕きました。
説明書づくりは本業と近い部分の作業でもあり、とても楽しめたのも良い思い出です。随所にちりばめたフレーバーテキストを読めば、ゲームの世界により没入できるのでぜひ!
説明書では各フェイズの説明に入る前にフレーバーテキストを添えました。こういった記述がある既存のゲームの説明書もとても好きです
これらのコンポーネント全般の製造は、我々の地元でもある名古屋の「BGM / 盤上遊戯製作所」様に依頼しました(同時リリース作の『名前のないレストラン』も同様です)。
おかげでとてもクオリティの高い製品になり、心地よくプレイしていただけると思います。
それでは今回はこの辺で。
ここまでの4回で、『新聞王』がどのようにできていったかをほぼ余すところなく紹介できたと思います。
希少だからこそ刺さる人には刺さる、オリジナリティある新聞テーマのゲームとして『新聞王』を末永く愛してもらえたら、作者にとってこれ以上の幸せはありません。
最終回の次回は、ボツ要素をまとめてご紹介しようと思います。ジャッキー・チェンの映画のエンドロールで流れるNG集のように、気軽に楽しんでいただければ幸いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
詳しいルールを知りたくなった方は、説明書を公開中ですので、ぜひご覧ください。
取り置き予約フォームも公開中です(5/22まで)。面白そうだと思っていただけたらぜひぜひ、ご予約ください!
