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[ボードゲーム作るには] 5. ゲームコンセプトを定めよう
2023/12/2 2:58
ブログ

ゲームコンセプトを定めよう

ゲームコンセプトとはどんな面白さを伝えたいか、を言葉に直したものだと考えています。この記事ではゲームコンセプトはどういうものか、どうやって具体化していけばいいか説明します。

 

コンセプトの種類

ゲームコンセプトは大別するとメカニクス主導とテーマ主導があります。メカニクス主導のコンセプトは伝えたい面白さがゲームメカニクスと強く紐づいているコンセプトです。例えば「下手な人が損をする苦しさを無くすこととトリックテイキング系の面白さを両立させたい」とか「デッキ構築のメカニクスとバースト系の高揚感を組み合わせたい」といった具合です。一方テーマ主導のコンセプトはどんなシチュエーションをボードゲームで追体験させたいか、という点に重きを置いたコンセプトです。例えば「課長になって社員をブラックにこき使って利益を上げたい」とか「焼肉食べ放題で効率よく注文して元を取りたい」といった具合です。

 

コンセプトを明確にしておくメリット

ゲームコンセプトを明確にしておくとゲームの調整をする際、指針になります。ゲームを調整していく中で様々な調整項目が出てきます。その時にコンセプトを定めておくと調整案の評価基準になります。小さなものも含めるとゲームの調整項目は非常にたくさんあります。コンセプトが明確だとそれらの調整項目の判断を一貫して行えます。一貫した判断を重ねられれば、制作したゲームでそのゲーム特有の面白さを実現できる可能性が高まります。例えば「焼肉食べ放題で効率よく注文して元を取りたい」というコンセプトでゲームを作り始めた時、作ったゲームが戦略性の高い頭を悩ませるタイプのゲームになっていたらどうでしょう。ゲームとして出来が良くても、プレイ感が「焼肉食べ放題」という題材に即したものでなければ、本来作りたかったはずのゲームから離れたものになっている、と判断できます。

 

コンセプトの作り方

ゲームコンセプトは自分が表現したいゲームがどんなものであるかを元に着想しましょう。自分の本心からの言葉をコンセプトとしない場合、コンセプトに沿ってゲームを調整すればするほど自分が実現したかったゲームから離れたものになってしまいます。一人で制作するのではなく協力してくれる人がいる場合、その人の意見に影響されて自分の好みと一致しないコンセプトを立ててしまうケースがあります。しかしそのようなコンセプトを立ててしまうと本来表現したかった方向と別の目標に向けてゲーム制作を進めていくことになってしまいます。ゲーム制作を主導する人は、どんなゲームを目指しているのかは自分の意見を明確に宣言するべきです。自分の意見を宣言した方が他の人もどう協力すればよいか、どんな意見を言えばよいか分かりやすいので、あなたを助けやすくなるはずです。

 

ゲームコンセプトをうまく立てるには普段から感受性を高めることが重要です。ゲームコンセプトの立案は短時間で行うのは難しいです。頭で考えたからといって表現したいものが浮かんでくるわけではないからです。期間を決めてその間必死に考えようとするよりも、普段から自分がどんなことを面白いと思うのかを分析する方が良いコンセプトに繋がりやすいと思います。例えば、遊んでみたゲームが面白かったら自分がそのゲームのどの部分を特に面白いと感じているのか言葉に書き出してみる、とか、生活の中で面白い体験をしたらその体験と似た構造のゲームメカニクスが無いか調べてみる、といった具合です。

 

コンセプトを立てる時、制約事項を元にゲームコンセプトを考えることもできます。例えばワーカープレイスメントのゲームを遊んで、「ランダム性を排除してもゲームが成立するのではないか」と感じたら「ランダム性を排除したワーカープレイスメント」というコンセプトを立てられます。上で挙げた「下手な人が損をする苦しさを無くすこととトリックテイキング系の面白さを両立させたい」というのも制約をベースにしたコンセプトですね。トリックテイキングというメカニクスは基本的に失点カードを引き取る、というものなので、下手であればあるほど失点を引き取らなければならないのが普通です。そこを何とかしたい、というのも立派なコンセプトの種だと思います。

 

ゲームコンセプトはボードゲーム制作中も絶えずブラッシュアップしていきましょう。初めから具体的なコンセプトを掲げそれを動かさない、というのが1つの理想ですが、ゲーム制作の初めの段階ではどんなゲームを目指すべきか自分の中で曖昧な部分が残っている場合があります。ゲームを作り始め、自分でルールを立ててテストプレイする中で経験値が蓄積し、自分が表現したい方向性が明確になっていきます。なので、ゲーム制作を進める際はルールを決めたりデザイン作業をする一方で時々コンセプトに立ち返り、自分が作りたいゲームをより適切な言葉で表せないか考える機会を設けましょう。

 

ゲームのコンセプトを具体化した例

私自身がどんな風にコンセプトを具体化していったかを紹介します。私の今回のボードゲームは「数字を揃えて組み合わせるパズル的な面白さ」をコンセプトに掲げています。しかし初めからこのようにコンセプトが明確だったわけではないです。そもそも初めに考えていたのは「持ち運びできる麻雀」を作りたいということでした。

 

麻雀は優れたゲームです。麻雀には様々な面白さがあります。運が絡むので初心者でも熟練者に勝てること、役満を揃えれば終盤でも逆転できること、どの牌を捨てるのが一番効率よくあがれるか考えること、戦うか降りるかの駆け引き、などです。

 

私は麻雀が好きなのですが1つ不満がありました。それは外に持っていきづらいということです。カード麻雀はありますがカードを14枚手に持つと広げにくいと言う問題があります。スタンドを使う手もありますが、スタンドを使うと置く場所の問題で他のプレイヤーから見えやすくなったり、スタンド自体が嵩張ってしまうのが嫌に感じていました。なので「持ち運びできる麻雀」をコンセプトにボードゲームを制作できないか考えていました。

 

持ち運びできるように麻雀をカードゲーム化しようとしましたがうまく行きませんでした。軽くするためにはカードの枚数を減らしたいのですが、手札のカード数を減らすとあがり方のバリエーションが少なくなり、面白さが薄くなってしまったように感じました。別の記事で詳しく語りますが、手札数の問題は長らく解決しませんでした。

 

麻雀ベースのカードゲームを検討することで、自分が麻雀のどの部分を面白いと感じていたのか明確に理解できるようになりました。私は麻雀の「効率の良い揃え方を考える」部分に強く面白さを感じていました。手札の数を減らしても麻雀の推し引きや役満といった面白さは残りますが、あがりかたのバリエーションが減ってしまう分「効率の良い揃え方を考える」楽しさは減ってしまっていました。この体験から作りたいゲームのコンセプトが持ち運びできる麻雀」から「数字を揃えて組み合わせるパズル的な面白さ」に変わっていきました。

 

このように私は普段から何となく作りたい方向性を考えていて、試作をする中でコンセプトを具体化していきました。ボードゲームが好きな人は、きっと既にコンセプトの種のようなものを持っていると思います。そういう種は内省したり試作したりしてうまく育てていければポピュラーなボードゲームに匹敵するゲームになるかもしれません。大切にしてください。