ハローワンダー

古来より子宝や豊漁の神力を秘めるとされ、信仰と奇習が深く刻まれた禁足地”孕神島”。この神秘に包まれた孤島が世界遺産候補に選ばれ、8人の関係者が島へと足を踏み入れた。しかし翌朝、入島の際の禊を拒んだ男が死体で発見される。これは祟りか陰謀か。そして島を巡る因習の正体とは? 現代怪奇マーダーミステリー『孕神島』

終末アイドル育成TRPG セイレーン 世界観~かくて世界はこうなった
2023/5/12 22:18
ブログ

はじめに

TRPGとは?

 本書はテーブルトークロールプレイングゲーム(TRPG)のルールブックです。
 TRPGは、ロールプレイングゲーム(RPG)の一種で、プレイヤーが物語の中のキャラクターになりきって冒険や戦闘を楽しむゲームです。TRPGは、コンピューターゲームとは異なり、ダイスや紙、筆記用具を使ってプレイヤー同士が会話によるコミュニケーションを取りながら物語を進めることが特徴となります。
 TRPGには、プレイヤー(PL)とゲームマスター(GM)の役割が存在します。プレイヤーはプレイヤーキャラクター(PC)と呼ばれる物語の登場人物を操作してゲームの目的を達成します。一方、ゲームマスターは、物語の舞台設定やストーリー展開、プレイヤーキャラクターが出会うキャラクターや敵を管理し、ゲームの進行役を担います。
 ルールブックの設定を元に遊ぶことが一般的ですが、独自の世界観やシナリオを作成して遊ぶことも可能です。また、本書を含め多くのTRPGでは、ダイスを使って行動の成功や失敗を決めることが一般的で、プレイヤーの選択やダイスの出目によって物語が変化します。これにより、遊ぶ度に毎回異なる物語が展開されていきます。
 TRPGの魅力は、プレイヤーが自分のキャラクターを介して物語に参加できることです。キャラクターの性格や能力によって、プレイヤーは異なる選択肢や行動を取ることができ、他のプレイヤーと協力しながら物語を進めることができます。また、TRPGでは、物語の進行や展開はプレイヤーの選択や行動によって大きく変わるため、プレイヤーは自分たちが主役の物語を楽しむことができます。
 しかし、TRPGには初心者が敬遠しがちな要素も存在します。例えば、独自のルールや用語が多く、最初は難しく感じることがあるかもしれません。また、プレイヤーがキャラクターになりきることを求められるため、人前で演技をすることに抵抗がある人もいるでしょう。そのため、ゲームマスターや他のプレイヤーが協力し合って参加者全員で楽しめるようにすることが重要です。

ゲームの目的


 舞台はAI技術の発達した近未来。既存の社会システムを破壊する量子AIの誕生を発端とした金融崩壊と先進国の大戦により、これまでの社会構造は崩壊しました。その後、技術開発への国際的な規制と管理下での量子AIによる社会の再構築が行われることとなります。
 しかし、規制による開発制限は後発の国々の発展阻害を引き起こし、アフリカを主戦場とした大規模紛争の引き金となりました。この紛争で、反規制側の国々が独自開発していたバイオコンピュータ”BRAIN”の兵器転用が試みられ、他の生物の脳細胞を媒体に増殖する侵略性有機コンピュータ”Algo-Nauts”が開発されます。
 当初は一兵器に過ぎなかった”Algo-Nauts”ですが、やがて人間のコントロールがなくとも自らの生物的欲求に従って人類を捕食するようになり、その脅威は世界中に拡散して行きます。皆様はAlgo-Nautsを『歌』で無力化する人間兵器”セイレーン”と、セイレーンを育成・運用して任務を遂行する”プロデューサー”となりAlgo-Nautsの脅威を排除して人類の生存圏を取り戻さなければなりません。

 それでは、皆様が主役となる物語を始めましょう。ようこそ世界へ、私たちはあなたを歓迎します。

―――世界秩序管理システム
トゥプ?繝槭ユ繧」

 

プレイに必要なもの

 本作を遊ぶには、3~5人の参加者が必要です。参加者のうち1人は”ゲームマスター”(GM)となり、残りの参加者は”プレイヤー”(PL)となります。GMとPLはゲームを遊ぶうえで異なる役割を持ちます。
 また、本作を遊ぶためには、以下のものを事前に準備しておく必要があります。

・ルールブック(本書)
・10面体サイコロ...参加人数×2
・筆記用具
・キャラクターシート:
プロデューサー PL人数ぶん
セイレーン PL人数ぶん

本書内の表記
 本作では、作中の専門用語を特殊なカッコでくくることで分類わけしています。カッコに対応する用語は以下の通りです。

【】:能力値
〈〉:技能
《》:スキル
{}:計算式
””:地名や組織名などの固有名詞
[]:上記の内容に当てはまらないゲームのルールに関わる用語

世界背景~かくて世界はこうなった~

グレートリセット

 2022年、人類史に残る技術革命が起こりました。かつてないほど高い精度を持つ対話型AIが誕生したのです。
 このAIはネット上にある膨大な情報を学習することによって、人間よりも圧倒的な知識量を持ち、人間のように臨機応変な会話が可能となるものでした。このAIの登場は人工知能の可能性を人々に体感させました。しかし、AIの可能性に多くの国々は期待よりも不安を寄せ、個人情報保護などの懸念から規制を強化していきました。その中で、日本はAIの活用や開発を積極的に推進したのです。これにより、日本は再び経済成長力を取り戻し、AI大国としての地位を確立しつつありました。
 さらにAI技術の研究は進み、人間が実現可能なあらゆる知的作業を理解・学習・実行することができる汎用人工知能(AGI)とそのハードウェアとしての産業ロボットが実用化されるに至り、労働の多くがAIに置き換わりました。また、AIの後押しによって量子コンピュータ技術などの先端コンピューティング技術においても日本はアメリカや中国と並ぶ開発力を手に入れることができました。しかし、量子コンピュータはまだ医療研究や交通網の最適化など、ごく限られた状況でのみ有効で汎用性からは程遠い状態でした。
 そんな中、日本が、量子コンピュータとAI技術を融合することで、汎用性を持った量子AIの開発に成功します。しかし、量子AIは既存の暗号技術や耐量子暗号までをも破る能力を持っていました。この事実が広く知られると、国際社会は金融機関や国家機密の保護に対する懸念を抱くことになります。つまり量子AIを持ってすればあらゆる金融機関のデータや国家機密を閲覧・改竄が可能になるのではないかということです。
 金融機関は取引情報や顧客データが漏洩する恐れがあると判断し対策を講じ始めました。しかし、パニックに陥った人々に対してはもはや対策が間に合わず、金融機関が破綻することを恐れ相次いで資産を現金化しようとする取り付け騒ぎが世界各地で発生し、金融市場の混乱が急速に拡大することとなります。その結果、金融市場が崩壊し、世界中の経済活動が停滞。失業率の上昇や企業倒産が相次ぎ、資本主義社会の崩壊が始まりました。こうして、後にグレートリセットと呼ばれる現象が発生しました。

大戦

 金融崩壊の原因が日本の量子AI開発にあるとされ、日本は多くの国から非難を浴び、経済制裁や技術提携の停止などの圧力がかけられ、日本の国際的立場は弱まることとなります。さらに金融崩壊により、世界中で生活に困窮する国民が増えました。その中で、中国とロシアが国家機密を盗んだことに対する報復という名目で日本への侵攻を始めます。
 それに対してイギリス、アメリカ、フィリピン、台湾が支援を表明し、日本、台湾、イギリス、アメリカ、フィリピン対中国、ロシアの世界大戦へと発展しました。ただし、日本への攻撃によって半導体工場や先端技術に関する工場を破壊すると、中国やロシアも打撃を受けるため、半導体工場や先端技術の関連施設がない地域を集中的に攻撃するか、施設がある地域をなるべく無傷で制圧しようとする作戦が取られました。
 その後、金融崩壊による世界的な不況と連合軍の海上封鎖により、世界中で深刻な食糧問題が発生します。これらの食糧問題は中国やロシアにとって戦争を継続するために早急に解決するべき課題でした。食糧問題を解決するため中国は、チベット地域の河川を利用して食料の大規模な増産を図りました。しかしその結果、下流に位置するインドで水が枯渇し、インドと中国の緊張が一気に高まり、インドの連合軍への参戦を招くこととなります。インドがチベット地域を侵攻したことにより、中国の食糧増産計画は頓挫することとなります。その結果、いよいよ中国やロシア国民の飢餓が深刻化し、国内での反乱が活発化。戦争を継続することが困難となりました。この状況を受けて、この戦争にこれまで関与してこなかった欧州諸国が介入し、停戦協定が結ばれました。
 この停戦協定により、先端コンピューティング技術の規制を目的とした「先端コンピューティング技術統制及び安全保障条約」が締結され、先端コンピューティング技術の運用・開発は、先端コンピューティング技術監視検証機関によって認可された特区に限定されることとなり、世界経済は特区と特区の量子AIを中心に再構築されることとなります。特区では先進的な技術の導入やインフラが整備され社会機能が回復しましたが、特区を中心に金融・政府機能の急速な再生を目指したため、特区とそれ以外の地域の格差が埋まらないものとなり、荒廃した地域には未だ復興できない場所も多く存在します。
 こうして、日本のAI大国としての躍進は終わりを迎えました。結果として、日本は領土を守り切ったものの、国土の半分以上が戦火に見舞われました。しかし一方で、経済活動の中心地や先端技術に関する工業地帯は一切被害を受けずに終戦を迎えることとなり、特区の設置により金融・政府機能の急速な再生を果たすことができました。
 

アフリカ紛争

 「先端コンピューティング技術統制及び安全保障条約」(ACTCST)により、先端コンピューティング技術の運用・開発は、先端コンピューティング技術監視検証機関によって認可された特区に限定されることとなり、さらに特区には自治政府の設置が義務付けられます。この自治政府は先端コンピューティング技術が一国に独占されることを防ぐ目的で設置され、選挙で選ばれた議員と先端コンピューティング技術監視検証機関から派遣された職員により運営されます。つまり特区を設置するには一国二制度を導入しなければならず、特区では必ず民主主義が導入されることになります。この制限が発展途上国の発展を阻害する要因となり、発展途上国が先端技術の開発を行うには民主主義の国々の文化や価値観に迎合することが求められるようになりました。この状況は主に、大戦中に国際社会の支援や影響力が弱まったことで、武装勢力による革命政権の乱立が発生していたアフリカ地域での反発を招くこととなり、アフリカでは紛争がさらに過激さを増すこととなりました。
 やがてACTCSTに反発する国々に、条約の規制で思うように研究できなくなった研究者たちが流れ込み、様々な分野の研究が加速しました。その中でも特に関心が高かったのがバイオコンピュータ技術です。反規制側の国々では独自のコンピューティング技術を開発することを目指してバイオコンピュータ技術の開発が進められました。その結果、幹細胞をデザインすることで任意の機能を持った神経細胞を作り出す「BRAIN」と呼ばれる技術が実用化され、ACTCST非加盟国で普及することとなります。
 この状況に危機感を覚えたACTCST加盟国は、彼らが支援するアフリカの国々を通じてACTCST非加盟国に圧力を加えていきました。その態度を受けてACTCST非加盟国はACTCST加盟国に対して宣戦布告を行い。アフリカを主戦場とした大規模な紛争に発展することとなりました。序盤は先進国の支援を受けていたACTCST加盟国が優勢でしたが、ACTCST非加盟国がBRAINを元に戦争用に調整された新兵器Algo-Nautsを投入したことで徐々に戦況が変化することとなります。他の生物の神経細胞を乗っ取り増殖する侵略性と、状況に応じて自身の体を作り変える適応力、そして自らエネルギー確保を行う自律機能を持つAlgo-Nautsは、負傷した兵士や難民を媒体として数を増やしACTCST非加盟国の強力な武器となりました。これにより戦況は膠着し、アフリカを主戦場とした紛争は泥沼の様相を呈していきます。
 しかし、兵器としてよりも生物的な特徴を持つAlgo-Nautsの繁殖力をACTCST非加盟国も抑えきれなくなりはじめます。やがてACTCST非加盟国の市街地にもAlgo-Nautsが攻め込むようになり、国民や兵士への被害が増大したことでACTCST非加盟国は国内のAlgo-Nauts被害への対応に戦力を割かなければならなくなりました。その結果、国力が低下し、革命政権を維持するだけの武力を保有することが難しくなったことで、自然崩壊するか、停戦を宣言する国が続出し、大規模紛争は一時的に終結することとなります。

S.O.N.G.設立

 しかしAlgo-Nautsの脅威は留まることなく増大していき、国際社会はこれに対応する必要に迫られました。その結果、世界各国の軍隊の駐留地であるジブチ共和国を拠点として、Algo-Nautsを殲滅することだけを目的にした超国家的軍事組織S.O.N.Gが設立されることとなります。しかし、一部のアフリカ諸国が海外の軍隊を国内で活動されることに対する抵抗感を示したため、名目上はアフリカ諸国の軍隊の統括組織として位置づけられ、実際の活動は各国の軍隊などにS.O.N.Gが技術支援を行い、S.O.N.Gが技術支援を行っている組織をS.O.N.Gの支部として扱うという形で運営されることになりました。
 設立当初はAlgo-Nautsをアフリカで食い止めることを目的として活動していましたが、長らくAlgo-Nautsに対する決定的な有効打を持てなかったため、Algo-Nautsは交易品に紛れ込んだネズミなどを媒体として世界各地に飛散し、S.O.N.G.の活動範囲と影響力もそれに応じて拡大することとなりました。そのため現在はアフリカ諸国だけでなく、世界の各地に支部や基地を持つこととなります。
 設立当初から各支部の独立性が高かったため、一部の支部で独自にバイオコンピュータの他、人体拡張や義体化、クローンなどの非倫理的技術を開発・運用を行っている疑惑がつきまとい、国際社会は厳しい視線を向けていましたが、先の戦争により疲弊していた先進国には各国の軍隊を統括するだけの影響力は残されておらず、Algo-Nautsへの決定打もない状況であったために、支部の独走は続くことになります。

ルブンガの奇跡

 Algo-Nautsと人類の戦いに決定打がない状態でAlgo-Nautsの活動範囲が拡大する中、Algo-Nautsが特に活発に活動するアフリカ中部のコンゴ共和国の小さな街、ルブンガでAlgo-Nautsの襲撃が発生しました。その時、ルブンガのカトリック教会では、平和を祈るミサの最中で、聖歌隊は教会の伝統的な聖歌を歌っていました。街が襲撃されたことに気づいた彼らは逃げることを諦め聖歌を歌い続けます。間もなく教会にもAlgo-Nautsが突入してきて彼らに攻撃を加えようとしましたが、聖歌隊の歌を聴いた瞬間、すべてのAlgo-Nautsが不可解な動作をしてから活動を停止し、教会にいた人々は無事保護されました。この驚くべき出来事は瞬く間に世界中に広まり、「ルブンガの奇跡」と称賛されました。この奇跡をきっかけに、歌を用いてAlgo-Nautsを無力化する技術の研究が進められていきます。そしてS.O.N.G.はこの現象を研究し歌を使った対Algo-Nauts用特殊部隊として「セイレーン」の運用を確立しました。
 これにより人類は初めて周辺地域に被害を出さずAlgo-Nautsに対してのみ有効な攻撃手段を手に入れたのです。それまで、S.O.N.G.の一部支部においてバイオコンピュータの他、人体拡張や義体化、クローンなどの非倫理的技術を活用されることがあるため「進歩主義者達」の隠れ蓑になっているのではないかと国際社会からの批判を受けていました。そのため、セイレーンの運用技術が確立されてからは、模倣できる国々はS.O.N.G.との関わりを断ち、自国でセイレーンを育成するか、民間組織を頼る動きを見せています。
 一方で経済的・技術的理由からS.O.N.G.への依存体制を変えることができない国々もあり、国際社会におけるS.O.N.G.の影響力は未だに強大なものです。さらには、先進国がS.O.N.G.との関わりを絶つことで国際的な監視力が弱まり、より一層S.O.N.G.の各支部の統制が取れなくなり、各支部の非倫理的活動が活発になっているとの見方もあります。いずれにせよ、世界の火種はまだ残されたままです。